日本人が知らないバイオリニスト

好きなバイオリニストのことを書きます。内容はすべて主観です。

胡乃元

胡乃元が日本でだけ知られてないのも理解に苦しむ現実です。

胡乃元はジョゼフ・ギンゴルトの弟子。つまりウジェーヌ・イザイの流れを汲む正統派のプレイヤーです。

地元の台湾ではもちろんブッチギリの人気です。

世界の映画好きには2001年の「ニューヨークの恋人」(Kate & Leopold)に出演したことでも知られています。

 

ツィゴイネルワイゼン、ツィガーヌほか

胡乃元のおすすめの一枚がこちら。

The Poetic Violin of Nai-Yuan Hu (Amazon)

The Poetic Violin of Nai-Yuan Hu (iTunes)

  • バイオリン:胡乃元(Nai-Yuan Hu)
  • オーケストラ:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(Royal Philharmonic Orchestra)
  • 指揮:陳秋盛(Chen Chiu-sen)
  1. Zigeunerweisen, Op. 20
  2. Tzigane
  3. Introduction and Rondo Capriccioso, Op. 28
  4. Poeme for Violin and Orchestra, Op. 25
  5. Concert Fantasies on Carmen, Op. 25

胡乃元の使用楽器は「イェネー・フバイが使っていた1727年製のストラディバリウス」という噂がありますが、ちょっと真偽不明です。デマならこういうディテールは出てこないのでおそらく本当だと思いますが。

この録音は、ストラドにしては乾いて土臭い感じの音色を出しています。軋ませたり頼りなく震わせたりしてパセティックです。こういう泣きの演奏ができるのはやっぱり地方出身者じゃないかなあなどと素人目に思います。イザイもフバイももっと健康な感じであるイメージを持ってます。なんとなくですが。

胡乃元とは?

胡乃元(フー・ナイユアン)は1961年生まれ、台湾の台南市出身のバイオリニスト。

5歳でバイオリンを始め、8歳のときには台湾国立ユースオーケストラを相手にソロで演奏しています。

1972年、11歳のころにアメリカに渡りました。最初はイェール大学でブローダス・アールとジョゼフ・シルバースタインに学びます。

ブローダス・アールはレオポルト・アウアーの孫弟子にあたり、マリン・オールソップも教えた人です。ジョゼフ・シルバースタインはエフレム・ジンバリストから教わったアウアー系でありつつ、ギンゴルトにも教えを受け、1959年にエリザベートで2位を取った人。

胡はインディアナ大学に移ってギンゴルトから直接教わるようになります。シルバースタインの紹介でしょうか。卒業後はギンゴルトのアシスタントに。ギンゴルトは1909年生まれなのでこのころ70近くです。

ギンゴルトの弟子にはハイメ・ラレードとかレオニダス・カバコスとか、なんかちゃらい感じで好きになれない人もいるイメージですが、胡にはそのあたりと一線を画してい

ると言いたい個性を感じます。

1985年にはエリザベート王妃国際音楽コンクール優勝。以後もコンセルトヘボウと共演したり各地で演奏しています。

東京フィルハーモニー交響楽団とも、東京メトロポリタンオーケストラとも共演してます。なのに日本で知られてない…。

2004年、胡は「台湾コネクション」という音楽祭を立ち上げます。室内楽を盛り上げるための音楽祭であるとのことです。

ネットの情報では1985年から2004年の間に何があってそんなに偉くなったのかよくわからないのですが、2001年のKate & Leopoldのころには相当に偉かったのしょう。

ジェラード・シュワルツ指揮のシアトル交響楽団と共演したゴルトマルクとブルッフの2番が定番である模様。

Romantic Violin Concerti

演奏年はちょっと不明ですが、amazonでCDの日付が1995年になってるのでそこが下限でしょう。上でおすすめしたPoeticよりもくっきりとした明るめの演奏です。

2012年と2015年にはエリザベートの審査員も務めています。現在はニューヨーク在住である模様。

独墺系のマッチョな演奏で耳が疲れた人におすすめ!

胡乃元の魅力は優しくて悲しい独特の震えにあると思います。ストラドなのに細く萎れた音です。この美意識はハイフェッツ諏訪内晶子からは決して出てこない種類のものだと思います。堀米ゆず子の妖艶とは違った意味で、胡乃元も東洋出身であることを活かして「エキゾチック」というイメージを身にまとうことに成功しているのではないでしょうか。